住まいのデザイン
デザインという言葉は、一般的に「意匠」すなわち「装飾上の工夫」について表すことが多いように思われます。そうした「デザイン」とは、消費者にとって購買意欲を高められるもの、目新しいものが良しとされ、「流行」と結びつき、その結果使い古されて行きます。
住宅においても例外ではなく、住宅地には、当時は最新であったであろうデザインのものが立ち並ぶ姿が見受けられます。
私達が消費者として成熟しつつある昨今、徐々に例外的なプロダクトも見られますが、未だデザインの目的は、購買意欲を高める為の手法・手段として用いられます。
当然の事ながら、購入者は見飽きたものより、目新しいデザインを求めます。そうしてデザインは消費され、製品は消費される事となります。
消費物(使ってなくなるもの)であれば、新しいものを買い消費することは、一つの娯楽でもあり、生活の中での楽しみにもつながりますが、住宅にとって「デザイン」とは、どうあるべきでしょうか。
消費経済行動とは切り離し、本来の「良いデザイン」とは何でしょう。
暮らしの中に身近にあるもの、例えばカトラリーひとつとっても、世の中には様々なデザインのものが溢れています。しかしながら確実に言える事は、「良いデザイン」のカトラリーとは、使っていることをまったく意識させないものであり、食事を美味しく食べるという目的の為のツールとして、自らは主張しないという共通点があります。
その結果、長く使い込まれ、様々な記憶と重なり、愛着が持たれ、より大切に扱われて行きます。
住宅においても同じではないでしょうか。
住まいは、住まい手が長い年月の中で、愛着の中に作りあげて行くものだと思います。
時代の変化に影響されない普遍性があり、住まい手の価値観の本質を表したもの。
日々の暮らしの中で、積み上げていく記憶を受けとめる簡素な器であるもの。
「住まいのデザイン」とは、そうあるべきだと考えます。