清濁併せ呑む
- 社長メッセージ
皆さんこんにちは。
朝晩は随分と涼しくなりましたが、まだまだ油断は禁物です。
台風が週明け未明にやってくるようです。充分ご注意下さい。
さて、皆さんは「水五訓」という言葉を聞いた事はありますか?
豊臣秀吉に仕えた黒田官兵衛の言葉です。
文字通り5章からなっており、水の本質的な性質になぞらえ、
人の上に立つものはどうあるべきかを説いた言葉と言われています。
その五訓の4番目に「清濁併せ容るる」という文言があります。
これは、嫌いだったり、許せない人をも受け容れ、許し、生きていく度量の大きな
様を示しています。現在では「清濁併せ呑む」という言葉で使われることが多いようです。
今回この言葉を取り上げたのは、マスコミを賑わした2人に
対照的な姿を見出したからです。
その2人とは小泉進次郎さんと貴乃花親方です。
共に全国にたくさんのファンがいる誰もが認める実力者であることと、
次世代を担うリーダーとして国民に期待されている点が共通項です。
しかし、この2人のそれぞれが置かれた境遇に対して、とった決断は
私にとっては対照的に映りました。世間には両者に対して賛否があることは
承知の上で、以下に私見を述べますのでその点はご容赦下さい。
まず、協会との一連の問題を抱えていた貴乃花親方は、当初の問題発覚以降
現在に至るまで協会と見解が常に一致してきませんでした。
つまり相手の見解と一致点と相違点はどこなのか?
それに対して、どうあるべきで、どう解決すべきなのか?
理解してあげたいのですが、その建設的なストーリーが全く見えないのです。
ただひたすら協会側を悪と位置づけ、自分の主義主張を突き付けるだけでした。
その姿勢は今週の引退届の騒動も同じでして、一方的に自身の意向を
協会に伝え、自己完結して閉ざしているように見受けられます。
理想論を掲げる事はとても大切ですし、尊敬に値します。
ただ重要なのは掲げる理想像を実現する途上においては、必ず自身の価値観と
異なる人や障害が必ず現れ、それに対する姿勢が問われる場面があります。
貴乃花親方には、あらゆる場面で自身が是とする見解以外を
許容出来ない「頑なさ」あるいは「不器用さ」を感じました。
それに対し、自民党総裁選での小泉進次郎さんの対応は極めて大人で、
年齢に見合わない、むしろ狡猾さ、強かさを感じさせるものでした。
今は決する時でないと悟ったのでしょう。
アンチ安倍首相である事は明白でしたが、投票直前まで石破さん支持を
明確にしませんでした。自身の影響力をよく理解し、今回の総裁選でこれを
行使する時ではないと判断したのだと思います。
これで、政権中枢にも一定の配慮を示した格好となり、なおかつ最後には自身の
意思を最終段階で表明し、安倍政権とは政治姿勢が異なることを明確化させました。
マスコミによっては今回の小泉さんの対応に中途半端との批判的な意見もあります。
しかし、私にはいずれトップに立って自身の理想像を実現するためには最適な
意思決定だったと思いますし、ギリギリの場面においてバランスの良い判断を
下せる力量と人間力、政治的能力を示したと思います。
まさに「清濁併せ呑む」です。
自分と異なる価値観と相対する場面において、どう処するかが見られているのです。
対立軸を打ち出して正面からぶつかったり、相手を断罪するだけでは不充分です。
これは組織トップだけに求められることではありません。
組織に所属する一人一人も同じ話なのです。
時には許したり、許さないまでも懐に抱え込むだけの度量が必要です。
そこにどう処するかは、相手だけでなく自身の応援者も「明日は我が身」
とばかりに実はよく見ているものです。
私にも理想論が強い傾向があり、ここに至るまで何度も失敗した経験があります。
今回の一連の2人の対応を見て、身につまされる思いでおります。
理想論を見失わず、尚且つ「清濁併せ呑む」ことを肝に銘じて
経営にあたる必要があることを再認識した次第です。