言葉の設計
- 社長メッセージ
皆さんこんにちは。
随分と蒸し暑く感じる日が増えてまいりました。ご自愛ください。
さて、今回は展示場開発のプロセスで再認識したことを記します。
我々アルスホームでは、住まいを設計する前に、
言葉でそれぞれの住まいの目的や定義を明らかにするようにしています。
いわゆるコンセプトメイキングというものです。
なぜ、このプロセスが大事かと申しますと、
一般的に住まい造りを進める際には、基本的には現時点で認識している
ご要望を盛り込んでプランを作り上げるというのが一般的です。
しかしながら、ご要望→プランニングというプロセスには
いくつか問題が孕んでいるのです。
第一の問題は、お客様自身のご要望がお客様の価値観や家族構成等の
用件に照らし合わせた場合、真に必要な要望かどうか、
正しくかつ、客観的な判断ができないことにあります。
要は、新築実例の本や沢山の展示場を見られて、「あれもこれも欲しい」
という状況になるのが一般的です。
しかし、私の経験から言っても、真に必要なスペースや機能、意匠は
実はかなり限定的で、住まいしてから「今となっては不要」という要素が
かなりあるのです。
従って、情報を整理して自身の価値観を見定め、本当に自分の暮らしに
必要なものは何なのかをじっくり考えることはとても重要なプロセスなのです。
これを丁寧に行うことによって、本当にその人らしい一邸が実現しますし、
何より、不要なコストをかけずに済むことにつながります。
第二の問題は、長期的な検証がなされず「プランの長期耐用性」を
欠きやすいことにあります。
仮に、お客様が30代で建築されるケースを考えてみます。
一般的には、お子様を育てている家庭がほとんどです。
お客様は今の自分たちの状況を鑑みてご要望を仰られるのですが、
実は、住まいされてから様々な変化が生じるのです。
例えば、子育てといっても、子供が高校生を過ぎると親との接点や頻度、
暮らしのリズムは変化しますし、大学などで家を離れるケースも出てきます。
親御さんは新築時はまだまだお若いのですが、子育てが一段落する頃には、
様々な不都合が生じ、どう向き合っていくかは多様です。
また、夫婦関係も然りです。
子育てが一段落するにつれ、これまでの家族はいつも一緒という形ではなく、
それぞれがお互いを尊重するスタイルに変化する事が多いようです。
つまり、時が流れるにつれ、家族構成や価値観、
過ごし方が変化しながら暮らすことになります。
従って、その変化の可能性をプランニングする際に充分に検証しないと、
必要だと思っていたスペースを全く使わなくなったり、将来必要なスペースや機能が
ないことにより、非常に住みにくいという事が起こったりします。
ハードの構造躯体の長期耐用性も重要ですが、同じくらいに
プランニングの長期耐用性が住まい造りには不可欠なのです。
そして、これらの問題を解決するべく、コンセプトメイクを行うのですが、
これはお客様単独で明らかにするのは非常に困難です。
そこで、我々と一緒に「本当に大事なものは何なのか?」
「どういう家族でありたいのか?」ということをやり取りしながら
自分自身と家族を客観的に可視化していきます。
こういう、プロセスを丹念に行い、言葉の設計がなされた住まいは、
外観や内観をみてもその人らしさを感じる邸宅となりますし、
何より、筋の通った「美しさ」を感じるものです。
(住まい造りは、自分の価値観軸を考える事ができる貴重な機会です)
「形には訳がある」
アルスホームの創業時に使われていたキャッチです。
流行り廃りに惑わされず、お客様の本質を押さえた住まい造りを
今後とも磨き上げて参ります。