「無事の美」
- 会長メッセージ
最終更新日:2022.03.26
「無事の美」
「喜左衛門井戸」は国宝に指定され、大名物、天下随一の茶碗と言われています。
しかし、説明がなければ、なんの変哲もない、極めて普通の古い茶碗。
名もなき職人が作った、一般庶民が毎日気兼ねなく使う日用品であり、
決して観賞用として作られたモノではありません。
日々の使用に堪えうる強度はもちろんのこと、
使う人にとっての持ちやすさや使い勝手の良さはるものの、装飾はありません。
職人の意図的な意匠や流行といったものは全く感じられませんよね。
意匠に凝りすぎ、主張しすぎるデザインのモノは、最初は目を引きますが、
すぐに飽きてしまうもの。
これだけ素朴なモノはある意味物足りないかもしれませんが
ずっと飽きることなく使い続けることができます。
そしてそれは、愛着へとつながっていくでしょう。
住まいもまた、毎日使う日用品。
だからこそ、丈夫で長く使え、飽きのこない、
疲れず安心できるモノでなければなりません。
そしてそれは、その住まいに住む家族こそが
使い易いものであるべきだと思うのです。
吉田五十八の言葉「もの足らなさの、もの足りさ」
で表現されるような住まいですね。
決して流行を追わず、主張しすぎないデザインで、
ただそこにあって美しい住まい。
日々の暮らしの中で、愛着を持って手入れをしながら、
ずっと暮らし続けたいと思える住まい。
そんな住まいをこれからも探求していきたいと思います。