山海 満也
アルスホーム株式会社
代表取締役社長
山海 満也

歴史の一端を担う

  • 社長メッセージ
最終更新日:2019.11.18

皆さんこんにちは。

随分と暖かくなってきました。
花粉も多く飛んでいるようです。

さて、つい先日、数寄屋について学ぶ機会がありました。
講師は数寄屋を得意とする建築家の方でした。

基本的な数寄屋の知識に始まり、使用する部材名称、
現存する茶室等の数寄屋建築遺構など幅広く教えて頂きました。

それはそれでとても有意義だったのですが、私が一番興味を持ったのが「起こし絵図」です。

皆さんはご存知でしたか?

私は全く知識を持ち合わせておらずとても新鮮に感じました。

簡単に「起こし絵図」を説明しますと、一見しただけでは和紙を折りたたんだ少々大きめの
封筒のようです。



これを開くと、和紙には茶室の平面図が貼り付けてあり、その四方にはそれぞれの
手書きの展開図が貼り付けられています。

一枚づつ展開図を起こしていくと、これから作る茶室の全体像が解るという仕掛けです。

(現在販売されている立体が飛び出る絵本のような感じです。ところどころ虫食いがあります。)

これらが作成された時期を聞いたところ、江戸中期から後期のものだそうです。
200年~300年前ということになります。

古くからの住居や城郭の設計図はこれまでも見たことがありましたが、
柱位置を明示したり梁桁の掛け方を指示するものがほとんどで展開図や立体化したものは
初めて見ました。

昔の時代も建築の特性と格闘していたことが伝わります。

建ててみないと実物が分からないという建築の特性に対して
絵を描き、組み合わせて可能な限り可視化を図り、検証していた訳です。

現在はCADに置き換わり、大規模建築ではBIM(Building Information Modeling)などで
詳細な検証が設計段階で可能となっています。

建て主と打合せに使ったのか、職人さんに指示を出すために作ったのか不明ですが、
建てる前の検証を江戸時代から行っていたことに驚きました。

その時代から時が流れて現在はというと、使う手段は変わっていますが、
やっていることは本質的には変わっていません。

そう考えてみますと、我々は現在の技術で現在の家を建てている訳ですが、
見方を変えると建築技術の蓄積と未来に向けての技能の継承を行うという役割も
担っているのだと認識しました。

普段当たり前のように作っている住宅ですが、大きな時間の流れの一部を担うという
ロマンを感じつつ、後世に恥じない仕事をしたいものだと感じた次第です。

「新しい技術に挑戦しよう」
「美しい家を作ろう」

アルスホーム企業理念2章2項、同3項です。
それを行じることは未来への責任でもあります。

この起こし絵図のように数百年後、我々の仕事が過去の努力として評価、検証される時が
来るかもしれません。