山海 満也
アルスホーム株式会社
代表取締役社長
山海 満也

床座の是非

  • 社長メッセージ
最終更新日:2019.11.18

皆さんこんにちは。

今日は節分です。文字通り「季節を分ける日」ということで、明日4日は二十四節季の立春を迎え
春へと向かうことになります。

気象庁のデーターを調べますと、まさしく大寒から立春までの間が一番気温が低く
4日以降は少しづつ気温が上がっていくのが見て取れます。

昔の人はよく季節感を捉えていたものだと感心させられます。

さて、今回は床座について考えたいと思います。

我々アルスホームのお客様にも、床座を希望するお客様がいらっしゃいます。

先日、とあるお客様の床座要望について検討する機会がありました。

いろいろな見解が交わされる中、会社としては一定の見解を整理する必要性を感じた次第です。

施主要件としては、原体験もしくは現在の暮らしが床座であることが挙げられます。

また、床座を希望する場合に具体的なシーンが明確か確認する必要があります。

例えば、大きな平テーブルで大人数で床座で食事をしたり、ちゃぶ台のようなテーブルを中心に
家族がごろごろくつろぐスタイルであったり、それなりに暮らしのイメージが鮮明である必要が
あると思います。

しかし、留意する必要があるのが長期的視点での検証です。

と申しますのも、人間、年を取ってくると足や腰が痛み床座だと苦労される年配の方を
多数見かけます。実際に私の実家も妻の実家もリビングは畳敷きの床座でしたが、
両親の加齢に伴い、現在は両家ともソファーが置かれています。

従って、床座を希望される場合は、将来ソファーを設置する可能性も検討しておく必要が
あります。

次に技術的要件を考えてみます。

まず一番大きな検証課題は「高さ」です。

床座の場合、座っている人の目線はかなり低くなります。

その場合、置き家具の高さと他人とのコミュニケーション目線の高さには一定の検証が
不可欠です。

つまり、低い位置からの目線だと、ダイニングテーブルの天板の裏側が見えたりする可能性や
床の汚れやホコリが見えやすくなります。加えて、立っている人との目線の乖離が大きくなり、
コミュニケーションを取る場合に不自然な目線の高さのずれが生じやすくなります。

それに対して、ソファーに座った場合はテーブルに座っている人や立っている人との
目線の高さの違いは、相当緩和され自然なものとなります。

次に、「素材」も検討する必要があります。

当然、床に座った時に、床材に直接おしりをおいても硬くてくつろげませんし、冬場の温感も
いまいちです。

従って、床座の場合はラグマットや畳など直接肌に触れる部分に対して適切な素材の選定が
必要となります。

一般的には触感に優れた素材は、掃除のしやすさや衛生面で相反する性質を持つ点に
留意が必要です。

また、背もたれをどうするかも考えておく必要があります。

私見としては、どちらが良いかと問われると、現在の暮らしのスタイル、コミュニケーション、
快適性、長期的視点を総合的に勘案するとソファースタイルが多くの人に適していると思います。

そもそも住居史視点で考えると、床座そのものは日本独自の座敷文化に発し、それが戦後の
公団住宅のダイニングとリビング兼用のちゃぶ台スタイルに引き継がれてきた経緯があります。

簡単に言ってしまえば住居の洋風化に伴い、床座からソファースタイルに変わってきた
大きな流れがあるのです。そこにメリットが多かったので現在の主流スタイルになっているものと
推測されます。

従って床座を希望される場合は、上記のいくつかの点に留意してご検討頂く必要があります。

また、我々作り手としましては、いずれのスタイルにしてもストレスなく寛げるスタイルを
作り上げ、ご提案したいと考えております。



(お客様との対話から生まれた床座の一つのカタチです)

「新しい暮らしを提案しよう」- アルスホーム企業理念2章1項です。

床座の是非について考える中、改めて我々の存在意義を考えさせられました。